シータヒーリング 対話とルールと境界線

「対話」はお互いのエネルギー設定、境界線を引く為の手法、というお話。

昔コンサルタントをしていた時、大規模ないくつかのホテルの従業員向けに講義をしていた。厨房のシェフなどバックヤード向けや、前線に出る営業さん向け、お花屋さん向けなど様々なセクションでそれぞれモノをお客様に届けるマインドコーチング。

例として、厨房の話。彼らの意見は年代により様々。時に利己的であったり、お客さんを見ていない意見だったりする。大体1度に少なくて30人くらいが参加し、各々が意見を持っている。だから、まず共通する「目的」の整理が必要になる。何のために調理をするのか?調理を通して何を実現したいのか、何を得たいのか。

厨房が持つジレンマの一つは、「お客さんの顔を直接見られないこと、ありがとうを直接いただけないことで、仕事の意義がたまに分からなくなる」。ゆえに、いつしか独りよがりの技術至上主義に陥ったり、目を向ける先がお客さんではなく内部の出世だったり賞レースになったり。目的を見失いやすい。

例えば「お客様に喜んでもらいたい、ありがとうを言われたい」という目的を設定したら、どうやったらその目的を見失わずに済むのか、それを叶えられるのかを対話ですり合わせる。例えば実際に取った方法として、年齢やキャリア関係なく、新メニューの社内コンペを行い、他セクションの従業員に投票してもらってお客様に出すメニューとして採用するか決めたという方法がある。その際にジャッジするような批評は拾わず、ポジティブな要素の多かったもの、コンセプトが分かりやすかったもの、その時代のトレンドやお客様心理に寄り添ったもの、というような評価項目を設けて、+αで感想を書いてもらった。プロの料理人に対して過剰な批評はいらない。プライドを刺激するし、「美味しかった不味かった」は個人差もあるので。この結果、入社2年目の若い調理人のメニューが婚礼メニューとして採用された。採用された本人のモチベーション、誇りがアップしただけでなく、「次回は!」というやる気が厨房に溢れた。お客様に喜びを届けたいという目標を見失わないモチベーション。
同時に、婚礼や宴会でシェフブースを会場に創って、リアルタイムで調理して焼きたてのステーキをその場で出したり、ビュッフェの際は必ず担当したシェフ何人かが会場のビュッフェボードの前に立ってお客様に料理の説明をしたり美味しい食べ方をお話したりと、コミュニケーションを直接取れる機会を当たり前のものにした。こうすると、直接お客様からありがとうを言われやすいし、自分たちが作った料理が誰かの人生の門出を彩って喜ばれている姿を見ることが出来、目的やモチベーションを見失わなくて済む。

メニューコンペだけでなく、メニューを開発するときは何でも自由に作ってよいというわけではなくて、前提としてどうしたら最終的にホテルの売上に結びつける事が出来るのかを各々が考える。売上に結びつくひとつは、エンドユーザーのお客様の「心を揺さぶる」メニューを開発すること。心を揺さぶるには、お客さんが何を望み、何を大切にし、何のためにホテルに訪れるか?という「お客さんに寄り添う」マインドが必要。言い換えれば、料理人のエゴやパラダイムでメニューを作るのではなく、相手(お客さん)の心を考え寄り添い共感理解して、想いに応えようとするマインド。

そこでも、対話が必要になる。

それはシェフとお客さんの間の対話もそうだし、シェフ間の対話、シェフ個人個人の自己の心との対話。会社組織の関連部署との対話。私との対話。

人と人とが一緒にいると、ルールが必要になってくる。これは相手を従わせるルールではなく、各々が心地よく在れるためのルール。個々のパフォーマンスを最大に発揮するには、お互いを尊重してハーモニーを奏でるためのルールが必要。そのルールは、対話から作られる。

例えば、厳しすぎる上下関係があれば、若手の素晴らしいアイデアが表に出づらい。ではその素晴らしいアイデアをお客さんに届けるためにはどんなルールがあればいいのか。若手のアイデアを吸い上げるというようなルールは厨房内部からは生れづらい。だから社内コンペというシステムを外部コンサルタントの私が持ち込むことが有効になる。人は慣れ親しんだやり方を手放したがらない。そういう場合は他者のサポートが有効で、利害関係のない立場の、権限を持った人間が賛否を対話したうえでルール作りをサポートするとうまくいく。

厨房で必要な器材が足りないなら、どんなシステムがあれば稟議が通るのか。承認の判断基準が定まっている必要もあるし、それが多数が納得する基準であることも必要。ワンマン経営で毎回ブレブレの承認基準であれば、モチベーションが下がり「どうせ訴えても無駄だから」と必要な器材無しに進むしかない。それはお客様にも影響が出る。ルールは「目的」が定まっていて、それを実現するための対話があってハーモニーを奏でられるルールになる。自浄作用が難しければサポートを受け取ることも、対話次第で素直に受け入れられる。

これは、シータヒーリングでもやっていること。生まれて来た目的は何で、その為にどんな感覚感情を学びたいのか、ゴールはどんな姿を実現したいのか。他者と現実を共同創造し現実を作り出し、そこから学ぶなら、自分が他者との意見の間で心地よいのはどういう距離感か。相手のパラダイムで考えて、それを尊重しつつも自分自身の生きるモチベーションも大切にする。そのために、相手との適切な境界線を引く。この境界線がルール。

自己の内面と対話し、ビリーフワークをしながら現実世界では、相手と対話しながらお互い心地よい境界線(ルール)を設定する。

ビリーフワーク「だけ」では、他者との対話がないから日常生活でダウンロードしたものを使いこなしたり、自分のモノにするのがなかなか難しいという経験はないだろうか。

三層で他者と共同創造する現実から学ぶのが人間。ビリーフワークは万能ではなく、そこに他者に実際働きかける対話、という現実的なエネルギー設定が必要。

対話があれば、起こりもしていない相手の未来の反応を恐れたり、自分だけでもやもや考えていじける、悲観的になる、諦めるという事態が避けられる。誤解や思い込みで相手を責めることも減る。つまり、境界線というルールを設定するには実際の対話が必要だということ。

さてここで「その対話をするというのがそもそもハードルが高いんだよ!思っていることを相手に伝えるのってしんどくない?」と感じた人は、トリガーなので「なぜ言えないのか」という点を掘り下げてワークしてみるのがおすすめ。

ここを放置すると、シータヒーリングで学び続けても、方程式に使う数字を見落として進んでいる状態なので望んだ答えが出ない。いつかは答えが出るけれど、何を見落としたのか気づいてそれに取り組んで、計算をやり直すという回り道をすることになるので、今「自己価値」をテーマにワークをおすすめする。

シータヒーラーはコンサルタントのようなもの。厨房だけでは、その組織の中の長年のやり方だけでは解決出来なかった問題を、外部から整理するためにやってきたコンサルタントが手法を投入するのと同じ。セッションという形で「違うやり方(新しい思考パターン)」を提示する。そして自己と対話することや、他者のパラダイムに思いを巡らせるというやり方を提示する。セルフワークでも、創造主という外部のブレない定義観点、最高の真実を自己の中に取り入れて、自分自身のアルゴリズムをコンサルティングしているようなもの。掘り下げ中に様々なビリーフや問題が出て来たら、最初に解決しようとしたことを解決するのに囚われず、最初のテーマは本当に掘る必要がある隠れたビリーフを炙り出す入り口と捉えて、炙り出されたビリーフから解決していく。コンサルティングで「儲けが出ない」という問題を解決する場合は、その状態になっている色々な問題点を炙り出し、ひとつひとつの問題を順に片付けながら、最後はその積み上げの成果として「儲からない」が解決される。ビリーフワークも同じ。一度に時間内に掘るのではなく、炙り出しと都度のワークが大切。ペアワークではなかなか出来ないので、セルフワークが最も速い。

ちなみに、当サロンが「アルゴリズムデザイン」という名前なのは、問題解決のアルゴリズムを様々なパラダイムからデザインして、心地よく学べるアルゴリズムに変えていく、という意味がある。脳のアルゴリズムは他者との関わりの中で形成されるから。